Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “おはようのちゅー”  〜バカップルな二人へ10のお題より @
        *お兄さんたちが高校生です、ややこしくてすいません。 



この時期といやという風物詩の中、
忘れちゃいけない大きいものに“受験”というのがあって。
だけれども、
年末や正月休みも返上して勉強とか、
センター試験開始とかいう話題を最後に、
世間様からはあんまり取り上げられてはないような気がしもし。

 「でりけいとな お話だから、
  そおっと しといてあげなきゃあって思うからかなぁ?」

ひょこりんと小首を傾げた拍子に、
まとまりは悪いがそれでもつややかな黒髪が、
少し強い風にあおられてしまい、
おでこ全開になってしまったのが
何とも愛くるしい、甘い風貌をしたおちびさんで。
そんな彼からの舌っ足らずなお言葉へ、

 「つか、いちいちニュースで浚ってられるほど、
  報道関係の人たちも
  暇じゃあないってトコなんじゃあないのかね。」

確かにまあ、人生の一大事だから、
当事者や家族は大変だろうけど。
世間様からすれば、
そのもの自体も 物資輸送を寸断される意味からも
命にかかわるほどの降りようになって来た大雪とか、
この時期に頻繁な火事だの事故だの、物騒な殺人事件だのの方を、
ついつい優先して報道しちまうんだろうさと。
日頃からも歳に見合わぬ達観した物言いをする子悪魔坊や。
今日もまた、けろりんと 大人びた物言いを返したものの。
陽をうけて軽やかに輝く金の髪がけぶるその真下、
その金茶色の双眸が見やっているのは、
街路沿いに居並ぶお店のウィンドウ・ディスプレイ。
このところの異常寒波のせいもあり、
まだ春ものを扱うには微妙に早いかなぁという頃合いだけれど。
風さえ吹かなきゃあ、今日なんて結構暖かい陽も出ているし。
まだまだ裸んぼなまんまの街路樹だって、
よくよく見やれば梢の先に、
小さな芽の気配がマッチ棒の先みたく、丸ぁるく膨らんでもいて。
そういった、次の季節を待ち遠しいなと思う想いもあるところへと。
街を彩る色合いに、
ピンクだのオレンジだのという軽やかなのが増えつつあるものだから、
余計に春よ来いという意識も強まるというところなのだけれど。

 「…バレンタインデーって、
  どうして入学試験の日と重なるのかなぁ。」
 「そこかい。」

セナ坊の想い人、進清十郎さんが通う学校は、
王城高校という私立の学校なので。
そこへの入試の時期が公立よりも微妙に早め。
公立を目標にしている人達も、
いわゆる“滑り止め”に
まずはと私立を受ける関係から…だそうだけれど。

 「だってさあ。」

小学生はまだまだ春休み前で毎日学校という日々。
でねでね、進さんところは、期末テストが終わったばっかで。
だったらアメフトの練習三昧になるはずが、
その前に入試があるからということで、

 「明日とそん次との連休は、ガッコに来たらダメって。」
 「それでも別にいいじゃんか。」

あの進のこったから、
どうせ家でもトレーニングはすんだろうが、
それでもサ。
堂々と朝っぱらから
直接家まで行きゃあいいってことじゃんかと。
何のどこが不満だおいと、畳みかけて差し上げたところが、

 「だってさ、進さんたら2日も休みなんてなったらサ、
  高尾のお山とか
  頂上まで何おーふく出来るかトレーニングとかに
  行っちゃうのだもの。」

 「………☆」

え"?と、これへはさすがに眸が点になりかかり、
傍らのお友達のお顔を二度見しちゃった妖一くんへ、
冗談ごとじゃあないんだもんと、むむうと膨れたセナくんが言うには、

 「冬ってゆーのはね、
  ちょっとでも怠けると身体の代謝ってゆーのが悪くなるんだって。」

そこで、燃焼率をより上げておくためにと、
そういう苛酷なこともやっちゃう彼なんだそうで。

 『ただの無茶じゃあなくて、
  ちゃんとインナーマッスルに効く足上げとか、
  効率や計画性も意識してのトレーニングなもんだからねぇ。』

しかも事前に
登山計画ならぬトレーニングプランを提出しても行くもんだから、
監督も黙認してるんだよね…とは、
一応はと裏を取った、アイドル ワイド・レシーバーさんのお言葉で。
成程、それを無謀なことは辞めなさいとは制止もしにくかろうというのは、
さすがに妖一くんにもようよう判り。

 「それにサ、
  入試は土曜日曜だけども、それを採点する作業とかあるからって、
  来週からもうガッコはお休みになっちって。」

  だからって、
  進さんたちは そのまま春合宿に出掛けちゃうんだって、と

せっかくの連休に逢ってくれないばかりか、
そんな遠出までしちゃうんだよと、口許尖らせてるかわいい子。

 「そっか……。」

来週といや、
巷を早めの春色で塗り替えようとしている前哨戦、
チャコールと組み合わせたピンクやオレンジも華やかな、
聖バレンタインデーもあるっていうのにね。
駅前のストリート、洋菓子店から雑貨屋、
酒屋にコンビニまでもがピンクのカラリングも華やかだってのに。
そしてそういうのが一番似合いそうな、
天使のような坊やだってのに。

 「せっかくチョコ味のシフォンケーキ焼くつもりしてたのにぃ。」
 「だったよなぁ。」

よしっ予行演習しようぜと、
妖一坊ちゃんが拳を握ったのを目撃した某総長さんが、
ちょみっとお顔をこわばらせたのが、ほんの一昨日のことだってのに。
それが空振ってしまうのはさすがに惜しいなぁと思ったらしき、
根はお友達想いの子悪魔さん。
う〜むむと、一丁前に小さな顎へと手を添えて、
鹿爪らしいお顔で深刻そうに考え込んだのもほんのいっとき。

 「よっし、こうしよう。」

頭の中でのシュミレートによっぽど納得がいったものか、
何度も何度もうんうんと頷いてから、

 「高尾山へのトレーニングに出掛けそうなのは明日なんだな?」
 「うん。」
 「じゃあ、今日から行動だ。」
 「ほえぇ?」

  よしか? あのヤロ、若いに似ず早起きも得意だからな。
  今日から遊びに行ってお泊まりして、
  明日んなったら、だ。

 「どっか行くなら、
  その前に“おはよーのちゅー”してくんなきゃヤダって駄々こねろ。」
 「ええ〜〜〜〜〜っ!///////」

途端に真っ赤っ赤になったセナくんだったのへ、

 「何だよ。そんくらいしてねぇのか、お前。」
 「だ、だってそんな…ちゅ、ちゅーってゆったら、////////」
 「何も口にじゃなくても良いんだって。頬っぺへ一発……」

  「おーっと、そこまでだ。」

油断をしていた訳じゃあなかったが、
足代わりにと呼び出していた総長さんが、
バイクは駅前の駐輪場へ停めて来たらしく、
ライダーズジャケットの裾を風にはためかせての足早に寄って来て、
有無をも言わさずに大きいお手々でお口を塞いでしまっており。

 「あにすんだ、ルイ。」
 「そっちこそ馬鹿やろだ。
  通りの端から端までよく通る声で、何ちゅーこと喋っとるか。」

  何だよ、頬っぺへのチューくらい何てことねぇじゃんか。
  それ以上言うんじゃねぇ、と。

けっこう深刻なお話をしていたはずが、
何だか急に漫才のようなやりとりになってしまい。
そんな二人を前にして、

 「…………おはよーのちう……。////////」

え~~~~、ヒル魔くんたら、葉柱さんとおはよーのちうしてるのぉ?
それって、朝一緒に起きなきゃ出来ないことだよねぇ

 「……そこ、何を小声でごちゃごちゃ言っとるか。」
 「はややぁ。///////」

夜這い大作戦なんか伝授しかかった人が、
今更照れ隠しに怒って見せてもなぁ……。





   〜どさくさ・どとはらい〜  12.02.10.


  *学校が長期休暇ともなりゃ、どこぞへか修行に行ってしまう男というと、
   おばさんたちの世代では
   “日向小次郎”くんをついつい思い浮かべるんですが。
   (特待生のくせに、とんでもない素行不良…。)

   そんな彼とはまったく違う主旨から、ではあれ。
   立ち止まったら死んでしまう、マグロのような男・進清十郎、
   少しでも時間が取れたなら、
   日頃とは異なる本格的トレーニングに有効活用しよう思い立ち、
   このくらいはしかねんのではないかと…。
(おいこら)

   そして、
   実はセナくんと進さんのカップルって、
   ヒル魔くんと葉柱さんの進展ぶりより遅れてたようですねぇ。
   ……って、それって今更な話でしょうかしら?(笑)
   照れ隠しついで、
   進さんのお宅へのお邪魔にも
   勢いよく付き合う子悪魔さんだったりし。
(こらこら)

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